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(ファンゲー)
妄想してみた②
ヨハンさんが、マル様を裏切った後くらいの話。
妄想だから、ダメだったら消す。
深くは気にしないでほしいかもしれない。
こっちも唐突に始まって、唐突に終わる。
よくわからない話。
魔獣の王は、膝をつき視線を落とす紫の髪の魔獣に一瞥をくれただけだった。
「お前も、好きに生きたらいい」
紡がれた音は低く、鼓膜を震わせる。
されど魔獣は首を振った。
「どこにでも、行って――」
「私は、……私は、好きに生きてございます」
呟きかけた音は、魔獣の声に重なり途切れる。
いつもより鋭い光を宿した紫に、王は僅かに目を見開いた。
「私は、貴女様の駒にございます。それ以外の生き方など、今はまだ考えるることなどできません」
紡ぎ、ふと口角を上げた。
淡く翡翠色を宿す己の核を両手で包み、魔獣は王を見上げて言った。
「――どうぞ、ご命令を」
告げる魔獣の瞳には、一点の曇りも見られることはなかった。
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