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メルヴィル城を出て、ローレル山脈を右手に眺めつつほど無く行くと、長大な市壁に囲まれたにぎにぎしい街がある。
ここヒースブルグの大半を治める、スターチス・オルブライト公爵の領地だ。
わだちの刻まれた石畳が森林地帯を抜け切ると、簡素な小屋が無秩序に居並ぶ貧民区にさしかかる。
急速にさかえる街には方々から人が集まってくるために、増え過ぎて中に収まり切れなくなった貧しい者たちが、こうして市壁の外にスラムを形成しているのだった。
アステル「前の戦争の影響か、難民は増える一方だね……」
ニア「ここはオルブライト様が正しく治めていらっしゃいますから、皆、公爵をたよってやって来るのでございましょう」
外をながめて憂鬱そうにあるじが言ったので、ニアは訪問先を話題にのぼせて返事をした。
沿道に、人の子と混じってキツネやクマの頭をした亜人の子たちが、あまりきれいとは言えない服を着て遊び回っていた。
ふと、立ち木の影にいた一人の男の子らしき者と目が合った。
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