・第1話〔4〕

10/12
101人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
  ナプキンを両者のひざの上にかけて、メイドの2人がともに部屋のすみへ待機すると、城主と浮浪児だけの食事が始まる。     アステル「さ、食べて」     モモ「うん……あ、ありがとう」      少女は目の前の皿に乗ったロールパンを素手で一つつかみ上げると、それを口まで運んでみけんをこわ張らせながらかじりついた。     アステル「どう? お口に合うかな?」     モモ「…………うん」      少女は両手で大事そうに持って、ひとかみふたかみ味わうようにそれをほおばった。     アステル「……おいしい?」     モモ「……うん、うん」      食べることにせいいっぱいといった様子で、少女は小忙しくかみしめつつ余裕もなげな返事をくり返す。   よく見ると、少女の手はかすかに震えていた。     アステル「全部、食べていいからね」     モモ「……うん、…………うん」      少女は泣いていたのだった。    悲痛に顔をひずませて、少女はあふれんばかりの涙を左右の目にためて、食べていたのだった。  
/518ページ

最初のコメントを投稿しよう!