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ナプキンを両者のひざの上にかけて、メイドの2人がともに部屋のすみへ待機すると、城主と浮浪児だけの食事が始まる。
アステル「さ、食べて」
モモ「うん……あ、ありがとう」
少女は目の前の皿に乗ったロールパンを素手で一つつかみ上げると、それを口まで運んでみけんをこわ張らせながらかじりついた。
アステル「どう?
お口に合うかな?」
モモ「…………うん」
少女は両手で大事そうに持って、ひとかみふたかみ味わうようにそれをほおばった。
アステル「……おいしい?」
モモ「……うん、うん」
食べることにせいいっぱいといった様子で、少女は小忙しくかみしめつつ余裕もなげな返事をくり返す。
よく見ると、少女の手はかすかに震えていた。
アステル「全部、食べていいからね」
モモ「……うん、…………うん」
少女は泣いていたのだった。
悲痛に顔をひずませて、少女はあふれんばかりの涙を左右の目にためて、食べていたのだった。
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