115.別たれた希望 北の大地を目指して 

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あのまま現実の向こうの世界に居たら、私は流されるように毎日の日常を繰り返して、 退屈な毎日を文句言いながら、必死に生きているフリをしていただけにも感じられるから。 「そうか……山波は強いな。  そう言う芯の強さってのは、山南さん譲りなのかも知んねぇな。  俺たちのこの先の未来はどうなる?」 ふと小さく、空を見上げながら紡がれた言葉。 私もゆっくりと空を見上げる。 そんな私と土方さんの間を風が駆け抜けていく。 風にたなびく髪。 「この先の未来……」 何を話していいのかわからないまま、 思い浮かぶ記憶を脳内でまとめながら、 話し始めた私の言葉を「いやっ、いい」っと 再びたった土方さんの声。 「俺としたことが何を弱気になってたんだろうな。  忘れてくれ。  それで、山波、お前はどうしたいんだ?  俺と来るのか?加賀と共に行動するのか?」 真剣に私に視線を向けて問い直す土方さん。 私はその視線を真っすぐにとらえて、「一緒に連れて行ってください」 っと言い切った。 「わかったよ……。  俺たちは、こうやってまたお前たちを戦に巻き込み続けるんだなー」 そうやって吐き出された土方さんの言葉。 罪悪感なんて抱く必要なんてないのに。 今は私が勝手に居たいだけなんだ。 山南さんが旅立って、丞が消えて……、 心がどうしようもなく寂しくなった時も、 土方さんは私を見守ってくれていた。 その不器用な優しさを知っているから。 だから私も精一杯の恩返しをしたい。 ただそれだけなんだから……。 「なら支度をしてこい。
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