116.悲しみの心 苦しみの心 

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バクバクと波打つ鼓動を深呼吸して落ち着かせると、 その感覚から逃れるように、真っすぐに師長を見据えて当たり障りのない返答をする。 「私と山波君の間の秘密の名前って言うか、『そうじ』は山波君の  ハンドルネームなんです。沖田総司が好きだから、総司って名乗っていて。  だから私も、つい『総司』って山波君のこと、呼んでしまうんです」 そう言ってにっこりと笑った。 「まぁ、山波君のハンドルネームだったのね。  沖田総司、新選組ね。  だから彼は、何か剣術をしているのかしら?」 その言葉に再び、ドキっとしてしまう。 「えっ、えぇ……。  総司は、高校で剣道部に入っているわ。  総司が住む家も、山波道場をしているから、  その辺りも影響受けてるかもしれないわね。  それでは、ごきげんよう。  山波君を宜しくお願いします」 そう言って、改めて深くお辞儀をすると、 足早に師長の前から逃げるように歩き出した。 どうしたんだろう。 病院の正面玄関のドアから出た後、 師長との会話を思い返す。
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