第一章  ~ピンク~

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白の回廊を老師に続いて歩いて行きます。老師は白い服を着ているので、頭ばかりが白の世界で浮いています。よくよく見ると老師の頭は本当に見事なつるっぱげです。ピンクはどうしてか無性に気になります。ついつい老師の頭ばかりに目が行きます。そんな様子をラダンに目でたしなめられました。 白の回廊の先は王宮の中庭が続いていました。外の冷気がほほに気持ちよく感じます。春を待ちわびていた花々がいっせいに咲き乱れています。 「さて、長旅ご苦労様でした。お茶にしましょう。」 見ると中庭にテーブルがありいつのまにかティーセットが用意されていました。 (こんなに悠長なことでいいのかしら。) と思いつつ、ピンクは席につきました。 「コーヒーと紅茶、どちらに致しますか。」 給仕がお世話をしてくれます。テーブルにはケーキやスコーン、サンドイッチなど食べきれないほど用意されています。ピンクはコーヒーとサンドイッチをたのみました。朝の食事をしてから、かなり時間が経っていたのでいっそうおいしく感じられます。 午後の日差しに照らされた庭はなんとものどかです。 「さて、運命の子よ。どこから説明しましょうか。」 一息ついた時、老師が尋ねました。 「…そうですね。分からないことだらけですので。 『運命の子』というのは、二人いるというお話でしたが。」 「ああ、知らないのですね。 あなたが生まれるよりちょうど十五年前の朝です。明け始めた空に金色にゆらめくほうき星が現れました。それは、朝の日差しに負けないほどの輝きを持っていました。そう、あの時はまるで太陽が二つあるかのように感じたものでした。その朝に誕生した運命の子。それが、そこにいるラダンなのです。」 ピンクは隣に座ったラダンをまじまじと見つめます。ラダンは微笑を返します。 「ラダンが…。 老師!ラダンは分かります。『運命の子』にふさわしいと思うもの。でも、なぜ私なんですか。他にもほうき星の出現の時に誕生した子供はいるでしょう。」 「それが、いないのですよ。これまでの歴史の中には、あなた方お二人を除いて。 ほうき星はきまぐれで、滅多なことでは現れません。そして通常、ほうき星が空にある時、そして消えた後もしばらくは、なぜか子供は誕生しないのです。」
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