第一章  ~ピンク~

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~ 世界の始まりは混沌でした。空と海の区別がなく、昼と夜の区別もありません。全てが存在していたのです。あらゆる生き物が光と影の中存在していました。しかし、ある時その中で理を支配する生き物が現れました。人間です。突然、一人の人間が理を生み出す力を持つようになったのです。その人間はまず、混沌の世界から時を作るために、昼と夜を分けました。そして、さらに空間を安定させました。初めて、空と海に区別ができたのです。混沌を愛するもの達は彼を憎みました。しかし、絶対的な力の前にはなす術などなかったのです。 我々妖精族はというと、理を歓迎しました。やがて王となった彼のもたらす秩序を歓迎したのです。賛否はありますが、絶対的な王の存在のおかげで、安穏たる暮らし、日々の平和を初めて手にすることができたのです。 残念ながらあれほどの王といえども、死は平等に訪れるもののようです。彼の死後、理を支配する力はその血をひく子孫によって受け継がれていきました。彼らの使命は初代の王が作り出した世界の調和を守ることでした。しかし、人間は時と共に使命を怠るようになります。平和は長くは続きませんでした。争いの火種にはいつも事欠きませんでした。また、人間は争いを糧に文明を発展させて行ったのです。初めて秩序を作った彼らが争いの本能を断ち切れないというのはなんとも悲しく、皮肉な話です。王の血は代を重ねるごとに薄れて行きました。それと共に、理を支配する力もまた薄れていったのです。力を失った人間の王の支配に限界が見え始めたそんな時代でした。初代の王の力に匹敵する二人の人間が誕生しました。一人は光の理を操るのに長けており、もう一人は闇を操る理に長けていました。 やがて、強力な力を持つ二人は互いを憎み、覇権をめぐって激しく争いました。両者の激突は避けられることなく、至上最悪の争いが繰り広げられました。
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