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「簡単に説明させていただきました。」
と、老師は穏やかに話を終えました。
ピンクは新しい情報をじっくり吟味しました。そして、尋ねます。
「ここでは独自の理が流れているはずです。なのに、どうして私は黒へと分類されるのですか。」
「ここの理は、めぐまれた土地を利用して我が国の王が保っています。しかし、それは外界の大いなる力の前では風前の灯なのです。この国でも、やはり黒に属する土地と、白に属する土地があるのです。あなたの土地では、村人は皆夜に誕生しているはずです。あなたは黒に属する土地で誕生したことで、何かしら影響を受けているはずです。何か思い当たることがあると思うのですが。」
「…もしかして、昼に空を飛ぶことを禁じられているのはそれが理由ですか。私が空に憧れるのも、その為ですか。」
「昼に飛ぶことを禁じられているのは、確かにそうです。黒のあなたにとっては危険なのです。その点ではラダンも同じです。彼も夜に飛ぶことを禁じられています。憧れについては、…なんとも言えません。しかし、だれしも手に入らないものに対する憧れは自然に湧き出る感情なのではないでしょうか。」
「ラダン、あなたも夜に憧れる?」
「うん。星を見ると切なくなる。僕は夕暮れよりも夜の闇に、強いノスタルジーを感じるんだ。」
「そう。
すみません老師、話を脱線させてしまいました。」
「いいんですよ。
では、そろそろ問題の核心に触れましょう。あなたは赤ん坊を見ましたね。」
「はい。」
「赤ん坊は王国の白が支配する領域と黒が支配する領域から一人ずつ現れました。まさしく、古文書の通りに。
ピンク、あなたは表情豊かですね。赤ん坊に会いたいですか。」
「ええ、ぜひ。」
ピンクはぱっと笑顔になりました。
「では、参りましょうか。」
老師の声で三人は席を立ちます。中庭の天使の噴水を通って、花のアーチをくぐります。視界が開け、広い湖が現れました。白い大きな鳥が、目の前で水面から悠々と羽ばたいて行きます。鳥の残した波紋が静まると、湖は青空と太陽、そして傍にある黄色の別邸を映し出していました。黄色の別邸は湖の向こうにひっそりとたたずんでいます。木々に囲まれているので目立ちません。
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