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身支度が整った頃ノックが聞こえました。
「どうぞ。」
ラダンです。
「おはよう。昨日はちゃんと眠れた?今日の調子はどう。」
「おはよう。うん、ちゃんと眠れたよ。
ありがとう。もうすっきり爽快な気分。」
「一緒に朝食をとろうと思って、バルコニーに朝食を用意させたんだけど、食べられそう?」
「わー。うれしい。もうすっかりはらぺこよ。」
バルコニーからは庭園が見渡せました。朝露で緑がしっとりぬれています。鳥のさえずりが時たま聞こえてきます。朝の新鮮な冷たい空気の中、暖かい紅茶はほどよく体に染み込んできます。丸パンをナイフで二つに切り、間にハムをはさんでいると、ラダンが言いました。
「君に言いたいことがあって、二人で朝食をとろうと思ったんだ。」
パンを食べながら、ピンクはラダンをうながします。
ラダンは人払いをした後、話し始めました。
「僕は君に自分自身の話をしたことがなかったと思う。
…僕は庶子の出の王の子なんだ。国の制度では母親の身分に関わらず、第一子が家督を相続できる。僕はこれまで皇太子としての教育を受けてきた。老師が現れるまではね。
ピンク、君の目に老師はどう映る?」
「どうって?優しいおじいちゃんに見えるけど。ピンクにはおじいちゃんがいないから、もしいたらこんな感じかなって。」
「そう。彼の一族の話を昨日少し、していたね。あれには続きがあるんだ。彼らは古文書を代々解読してきた。この国では、旧世界の文字の解読はもはや彼らにしかできない。古文書は神話であり、歴史であり、物語なんだ。今でこそその信憑性を疑う者はいないけど、少し前までは、誰も古文書なんか信じていなかった。それが、彼ら一族に古文書の情報を独占される事態を招いてしまった。僕は彼らが故意に古文書の正当性を隠していたんだと思っている。
…この指輪。最近発見された秘宝なんだ。僕も今日初めて目にしたよ。」
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