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「雲の上からだと、大地の乾きや雨の匂いには気付かないものなんだわ。」
一人つぶやいて、球を指に通します。
なんとはなしに、ピンクは窓に近寄り湖を眺めます。湖に沿って、こちらに向かう老師の姿が見えました。ピンクは昨日老師を置き去りにしたことを思い出します。衝動にかられたラダンとピンクは羽をつかって湖の上を越えました。飛べない老師は二人に追いつけなかったのです。
(老師は、どれだけあんな風にもどかしい思いを味わってきたのかしら。)
ピンクは胸が痛くなります。
老師はゆっくりとした歩調で、しっかりと歩いて来ます。
(老師ならきっと笑って、こう言うに違いないわ。
「目的地には必ずつけるのです。時間がかかる分、気付くことのできる景色も多いのですよ。」
って。)
ピンクは玄関まで、老師を迎えに行きました。
「おや、晴れ晴れとした笑顔ですね。最初の憂いはふっきれた様です。
お迎えありがとうございます。」
「いいえ、どう致しまして。こんにちは、老師。」
「こんにちは。今日もいいお天気ですね。」
二人は赤ちゃんの部屋へと向かいます。赤ちゃんの健やかな様子を眺め、老師は言いました。
「この子は何者だと思いますか。」
「分かりません。でも、強い愛情を感じます。私の与えられた宿命はこの子と供にあることだと感じています。」
「ええ、その通りです。昨日は、世界の始まりについてお話ししましたね。
今日は、世界を分けた二人の王の話をしたいと思います。」
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