第一章  ~ピンク~

25/30
前へ
/30ページ
次へ
~ 巨大な力を持った二人の王は、互いに表と裏の存在でした。万能の彼らは、互いの心だけが分かりませんでした。彼らは互いに相手に対し強い感情を抱きます。そしてその感情がなんなのか、自ら分析できなかったのです。憎み、妬み、愛が交錯しました。疑心暗鬼になった彼らは、互いに探り合ううちに、相手の姿に囚われてしまいます。二人は互いに争うことで互いの気持ちを探りあうことに夢中になって行きました。 力の強い者の周りには多くの人間が、蟻が砂糖に群がる様に集まります。力を利用しようとする者、力に惹かれる者、甘い汁を吸おうとする者。そうした者達が、事態を急速に悪化させて行きます。周囲の人間達の野心と思惑が二人をいっそうたきつけました。 二人が我に返った時、そこには無残に荒れ果てた彼らの領土がありました。取り返しのつかない悲惨な状況を呆然と見やり、彼らは嘆きます。失われた命を思い悲しみました。破壊は、彼らの本意ではなかったのです。皮肉にもその悲しみと喪失の感情こそが、初めて二人の心を結びつけたのでした。彼らは互いの心を見つけたその時、犯した罪の代償により互いが引き裂かれる運命にあることを悟ります。というのも、破壊されたのは大地だけではありませんでした。時間も空間も修復する必要がありました。彼らは互いに相反する力を持っていたので、全てを修復する為には世界を二つの理で分断しなければなりませんでした。 彼らの力は絶大でしたので、もしかしたらこのように極端に世界を二つに分ける必要はなかったのかもしれません。彼らは犯した罪に報いる為に、真に望んだ相手との決別を選択したのだと私は考えています。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加