第一章  ~ピンク~

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老師は歌う様に話を終えます。老師は気持ちが高揚しているようで、その瞳には若々しい光が宿っています。 「もう、お分かりですね。その力を受け継いだ者が誰なのか。」 ピンクは赤ん坊を見やります。赤ん坊は大きな目をいっぱいに開いていました。 「この子は、まるで話が分かっているようだわ。」 ピンクはつぶやきます。そっと、赤ちゃんのほっぺたを、手の甲で優しくなでます。赤ちゃんはピンクの手の指をそっと握りました。そして、こぼれる様な笑みを見せてくれます。 「あなたは、白の子の額に印を見たと思います。その文字を教えていただけませんか。」 老師がなにげなく言いました。 その時、ピンクの指を触れる様に握っていた赤ん坊は、何かを訴えるように、手に力をこめました。 「ごめんなさい。読めませんでした。」 ピンクは慎重に答えます。 「そうですか。では、次回紙に模写していただけませんか。いずれ、必要になる情報です。」 その時、ぱっとひらめくものがありました。ピンクは眉をひそめて言います。 「それは赤ちゃんの本当の名前なのではないですか。 真実の名を知ることで、その名の相手を縛ることができると、祖母が御伽噺の中で話してくれたことがあります。」 老師はしばらく、ピンクを測るように見ていました。やがて、観念したように肩をすくめます。片眉をあげ、おどけて言いました。 「おや、知っていましたか。あなたは、民間伝承の盛んな村の出身でしたね。うかつでした。忘れていましたよ。 ええ、その通りですよ。額にはその子の真名が浮き出るのです。力を暴走させてしまった反省から、二人のかの王は力を引き継ぐ子に運命の子…と言えば聞こえはいいですが、単なる従者です。そう、従者を与え、相手の名を縛ることを可能にさせたのです。」 老師の目はらんらんとし、異常な輝きを宿しています。ピンクは子供を抱きしめ、じりじりと後ずさりしながら言いました。
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