第一章  ~ピンク~

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ピンクが人の年齢で言う十歳になった時、大きな事件が起こりました。 その日、ピンクは村の外れの小川で仲間たちと鬼ごっこをしていました。とても天気のいい日で、小川の精はさやさやと美しい歌を歌っていました。そう、いつもと同じ時が流れていました。大きな事件が起こったのはまさにそんな穏やかな時でした。大人たちに決して近づいてはいけないと言われていた、王国の境界線の向こうから、突然均衡を破る大きな衝撃が感じられました。 その瞬間パニックに襲われた多くの仲間たちは自分の住みかへと逃げ帰りました。しかし、ピンクだけは身を潜め、ことの成り行きを眺めていました。すると、境界の霧の向こうから大きな影が近づいて来ます。影は近づくにつれ形をなして行きます。それは大きな泣き声を発していました。泣き声の正体をつきとめようとピンクはそっと近づきました。すると、巨大な赤ん坊が泣きじゃくっていました。 「赤ちゃん!」 ピンクが目を丸くしていると、後から異変に気づいた大人たちがやって来ました。 「ピンク!止まれ。何をしている!境界を越えるつもりか。 …さっさと家に帰りなさい。」 お父さんでした。後一歩というところで、ピンクは国境の禁じられた場所を越えるところでした。自分でも、禁を犯すということに恐ろしさを感じました。後ろ髪をひかれながらもピンクは素直に家に帰ることにしました。 (あー、後でめいっぱい怒られるな。) と、思いつつも父親が現場にいたので後でことの成り行きを聞きだせるとも考えました。 帰り道、ぼんやり飛んでいると茂みのほうから、 「ピンク!」 と、こっそり呼びかける声がありました。振り返ってみると、友達のラダンでした。ピンクは羽だけでなく髪の毛も目の色もピンクでしたが、ラダンは薄いブルーの羽に金の髪、緑の瞳を持っていました。普通の妖精は一つの色しか持っていません。ラダンは一目で高貴な王家の血筋が流れているのが分かります。
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