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「ラダン!また勝手にお城を抜け出して来ちゃったの。だめじゃない。」
「ちぇ。腕白坊主のピンクにだけは言われたくないな。」
少し笑ってラダンは言いました。
「で、何を見たのさ。君たちが鬼ごっこをしているのを、勉強部屋からこっそり水晶で眺めていたんだ。」
「また勉強をさぼっていたのね。あら、水晶で見ていたのなら何が起きたか分かるはずじゃないの。」
「それが、映像が急に乱れたんだ。結界の綻びの衝撃も感じられたし。」
「結界の綻び?」
「ああ、何かが外界から進入した。そうだろう?で、何を見たんだ。」
「巨大な赤ん坊。」
「巨大な赤ん坊?本当に?」
ラダンはしばらく目を見張って何か考えていましたが、すぐに、
「ピンク、大変だ。急いで帰りなさい。」
「…なによ。急に年長者ぶって。分かったから、睨まないで。帰るわよ。でも、ラダンはどうするの。それに思い当たるんだったら答えてよ。あれはなんなの?」
ラダンは少し迷っていましたが、答えてくれました。
「人間だと思う。…王家としても対応に迫られるだろう。僕も帰らなくては。いいね。帰るんだ。」
こっくりうなずくと、ラダンはすっといなくなりました。ラダンが消えるのはいつものことなので、ピンクは気にもしません。それよりも、
(人間!!)
ピンクの胸は興奮ではちきれそうでした。いてもたってもいられなくなってピンクは、必要以上にスピードを上げて家に帰ります。
(大人はこのことを知っているかしら。おばあさんはどんなにあわてふためくだろう。)
ピンクの家は大きな木の中です。今の季節は春。新芽が太陽を浴びて生き生きと空を目指しています。ピンクは新しい命を感じさせてくれるこの季節が一年で一番気に入っています。憧れの空を目指すという新芽の本能に共感できるのかもしれません。
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