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「そうだイカロス!イカロスもあんなに巨大だったに違いないわ。」
ピンクは太陽を眺めます。想像上のイカロスが巨大な翼を広げ、まるでその影が太陽すらも覆い隠すかのように飛んで行く様子が見える気がします。そして、巨大な影は次第に小さくなって青い空が彼を飲み込むのです。空が深淵に見えるのは夜を除いて初めてのことでした。少し背筋が寒くなりました。
「ピンクや。」
おばあさんの声です。急いで家に入り、声の聞こえてくる部屋へ向かいます。おばあさんは薬草を煎じていました。つーんと、匂いが鼻につきます。意外にもおばあさんはいつものように落ち着いて作業をしています。おばあさんはゆっくり言いました。
「ピンクや。ほうき星の話を知っているかい。」
「ピンクの本当の名前の由来でしょう。何度も聞いたよ。」
「そうだね。いいかい、どうやらおまえの運命は今日というこの日を境に回り始めるだろうよ。」
おばあさんは遠くを見やって、ピンクに分かり易くどう話そうかと考えていました。
「よくお聞き。世の中には正しいことが沢山あるんじゃよ。正しいと思われる価値観じゃな。その正義と正義がぶつかるとき、争いとはおこるものじゃ。」
「おばあさん。正義と正義なら、どちらも正しいじゃない。ピンクはどうしたらいいのか分からないよ。」
「そうじゃな。寛容さじゃ。お互いに、互いの価値を認めることができれば衝突は避けられるんじゃ。わしら妖精族が人族よりも優れているのは寛容さについてじゃな。だから我が王国は平和なんじゃよ。
いいかい。よく覚えておくんじゃよ。」
「わかったわ。おばあさん。」
ピンクにはおばあさんの言葉がひどく心に残りました。何かこれから起こる出来事の重要な道しるべになるような言葉でした。
ピンクは急いで、さっき見た巨大な赤ん坊の話をしようと口を開きました。
「おばあさん。」
すると、どーーーーんと、新たな衝撃を感じました。今度はさきほどと反対の方角からです。
おばあさんが、衝撃の方向を見やり、
「二人めじゃ。」
と、つぶやきました。
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