第一章  ~ピンク~

7/30
前へ
/30ページ
次へ
なんだか、不安になってピンクはお母さんに尋ねました。 「そうね。でも、ピンクは大きくなったんだから一人でも大丈夫ね。」 そういって、お母さんは抱きしめてほっぺにキスをしてくれました。 使者は二人でした。王家に使える者の印であるオレンジのマントを羽織っています。襟にある黄緑の縁取りがとても素敵です。傍には黒いドラゴンが控えていました。ドラゴンはうろこが濡れたように黒光りしています。爬虫類のようなとんがった目が印象的です。 「わー。ドラゴンに乗るのね。生まれて初めて。」 お母さんとおばあさんが見送りのために家の前に立っています。元気に手をふって使者に手を引かれます。ドラゴンのするどいうろこに、皮膚を切られないように気をつけながら車に乗り込みました。さあ、出発です。ドラゴンは蝙蝠のような翼をはためかせ、青空をぐんぐん進みます。ピンクの木の家はあっという間に小さな点になりました。高いところから眼下に広がる景色を眺めると、世界は自分のものであるような大きな気持ちになります。ピンクの家は王国の外れにあるので、幾つもの山や草原、森を超えなければなりません。さまざまな景色があっという間に過ぎ去って気が付けばお城が見えてきました。お城の壁は白で統一され、屋根は蝶の羽のように鮮やかです。 「光の加減で、お城の屋根の色が変わるのね。なんて綺麗なの。」 使者はほほえんで言いました。 「お城の中も大変美しいですよ。さあ、着地に入ります。風圧に負けないように、しっかりとつかまって下さいね。」 ドラゴンは優しく舞い降りたので、衝撃はさほど感じられませんでした。大地に降りたって、ピンクはお城を見上げます。しかしお城は大変大きく、頭を反らしても、てっぺんを見ることはできません。ピンクは圧倒されながらも、持ち前の負けん気の強さで、胸を張って入城しました。扉は音もなく開きます。 長い青の回廊を通された時、呼びかける声がしました。 「ピンク!」 ラダンです。使者は即座にひざをつき、礼の形をとりました。 「どうして君が…。そうか、君なのか。」 そう言うと、ラダンは使者に命じました。 「ここから先は、僕が案内するよ。ご苦労だった。下がっていいよ。」 「はっ。」 使者は去って行きました。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加