第一章  ~ピンク~

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ラダンは、濃紺の服を着ています。襟や袖が金でふちどりされていて、ボタンは銀です。高価な服だと一目で分かります。ラダンは近づくと言葉少なにうながしました。 「こっちだよ。おいで。」 ピンクはラダンの差し出された腕に手を通します。ラダンの黒のブーツが広いホールに静かに響きます。エスコートするラダンの洗練された雰囲気に、ピンクはなんだかとまどってしまいます。何かしゃべらないと気詰まりな気がして、ピンクは急いで話しかけました。 「ねえ、ラダン。いつもどうやって、こんなに遠くからピンク達のところまで遊びに来ているの。」 「ワープ石を利用するんだ。」 「ワープ石?」 「うん。ワープ石はあらかじめ移動したい場所に置いておくと、そこへ瞬間で移動できるんだよ。国境には警備の為に、常にワープ石が配置されてあるから、息抜きしたくなったらそれを利用しているんだ。国境だとあまり人に見咎められることがないから。」 「そう。やっぱりラダンはとっても偉い人だったんだね。」 ラダンはあいまいな笑顔を見せました。 ピンクはワープ石がどんなものか思いあたりました。国境近くに点在するエメラルドグリーンの石です。 「じゃあ、帰る時はワープ石を使って、すぐにおうちに帰れるんだ。」 ラダンは顔を曇らせました。ピンクは巨大なシャンデリアに目を奪われていたので、ラダンが黙ったことになんの疑問も感じませんでした。二人は赤い絨毯のしいてある階段を登って、謁見の間へ到着しました。そこには王様と女王様がいらっしゃいました。王様はとてもふくよかで、大きな王冠を頭に載せています。女王様は華奢で光沢のあるクリーム色のドレスを優雅に着こなしています。ラダンとピンクは片ひざをつき両陛下に対して礼の形をとりました。 「名はなんと申したかな。運命の子よ。」 王様の声が静寂の中に響きます。太くてよく通る深みのある声です。ラダンに目配せをされ、ピンクはそれが自分への問いかけだと気づきました。
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