1.あたりまえに続くはずの日常が消えた日 

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そして駅に到着した時には、 聖フローシアの制服に身を包んで花桜に手を振る花桜の親友。 岩倉瑠花【いわくら るか】が姿を見せる。 姿を見せる。 そのまま、女三人の輪に男一人紛れ込んで向かう全国大会の会場。 会場に着いた途端に、俺の友人たちに持てる男はいいよなーなんて 冷やかされたが俺はきっぱりと「そんなんじゃねぇよ」っと告げる。 心の中で『今は……』と情けない言葉を付け足して。 試合が始まると、それまでのモヤモヤも一気に 剣が打ち清めてくれるみたいに、その太刀筋の一つ一つが先読みできる。 緊迫した試合の果て、 優勝者に俺と花桜の名前がそれぞれに告げられる。 そして準優勝の名前には足を負傷しながらも、 ここまで勝ち上がってきた舞の名前。 「舞……」 「やっぱり負けちゃった」 「でも凄かったよ」 悔しそうに俯く舞の肩にそっと手を添えて、 優勝コールに喜びの笑みを浮かべる花桜に、 舞の涙が見えなければいいと二人の間に体を割り込ませた。 「舞、後で瑠花とお茶しよう。  敬里も来たいなら来ていいよ。  アンタはおまけだけどね」 「うるせぇよ。  俺はお前らみたいに暇じゃねぇよ」 そんな憎まれ口を叩きながら、 それぞれの学校の輪の中へと戻っていく。 それが……アイツと交わした最後の会話になるなんて想いもしなかった。 その晩から、アイツは道場に帰ってくることはなかった。
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