第二章  ~ラダン~

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ラダンは窓のカーテンの隙間から外を眺めていました。今日は年に一度の火祭りの日です。ラダンの村では夜に戸外に出ることを禁じられていました。しかし、新月の夜の火祭りの日だけは特別でした。軽快な笛の音や太鼓の音が聞こえてきます。松明があちらこちらで燃やされています。煌々と照らされた炎がまるで、夜の闇の中踊っているようです。夢中になるあまりラダンはうっかりカーテンの前に体を出してしまいました。瞬間激しい痛みがラダンを襲います。ラダンの悲鳴を聞いて、母親が血相を変えてやって来ました。 「何をしているの。」 母親は、ラダンを窓から引き剥がしました。しかし、時すでに遅く、ラダンの全身に転々と火傷の痕のように火ぶくれができています。ラダンは激痛のあまり床を転げまわります。 「ああもう、かわいそうに。」 母親は涙をぽろぽろ流しながら、薬をぬってくれます。緑の薬は嫌なにおいですが、ぬるととても冷たくて、火傷のほてりが心地よく引いて行きます。 「ラダン、あなたは極端に闇の光に弱いのだから、注意しなきゃだめじゃない。なんども言ってるじゃない。どうして分かってくれないの。」 ラダンの母親はとっても泣き虫でした。涙を流す母親を見ているとラダンの瞳からも涙がポロポロ流れます。ラダンは村の子供の中でも特に闇の理を受けやすく、何かある度に大きな怪我ばかりしていました。その度に母親はポロポロ涙を流します。ラダンは母親の涙を見る度に、反省するのですが、おおせいな好奇心のせいでいつも闇に対する用心を忘れてしまうのでした。 朝が来るとラダンの体はみるみる回復します。夜の世界に極端に弱いラダンでしたが、昼の世界では驚異的な力を示しました。
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