第二章  ~ラダン~

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ラダンは早速外へ飛び出します。朝もやの中、昨日の祭りの名残が残っています。村の子供たちはみんな楽しんだはずです。かがり火の残骸を後から大人達が片付けにやってくることでしょう。祭りの場所をぐるっとめぐって、ラダンは昨日の様子を想像します。丘の上に一番大きな炎のやぐらがあります。四方八方からそのやぐらを目指して、多くの火が矢で放たれたことでしょう。それは、流星群の様に見えると聞いています。そうして、やぐらに火がつくと、火が照らすことのできる空までの飛行が可能になります。皆に酒が振舞われ火と共に妖精達が踊り始めます。妖精達の歓声に負けないように、笛の音や太鼓の音が騒がしいほどに鳴らされたことでしょう。火の粉が舞い散る中を皆一心不乱に踊り狂います。火の揺らめきは新月の夜を赤々と照らし、星のまたたきさえもかき消すほどだったに違いありません。年に一度のこの日だけはどういうわけか、白の理に属するこの村でも、夜に思い切り楽しむことができたのです。一人の例外を除いて。 がやがやと騒がしくなってきました。人々が目覚め、朝の時間が動き出しました。ラダンは、朝げの準備が整う前に家に帰るつもりでしたので、目的の場所へ急ぎます。ラダンの向かう先には村の森の中でも、一番古いぶなの巨樹がありました。夏の日には他の木々を大きな影に飲み込むほど、多くの葉をつけます。今、この巨樹は冬に向けて葉を落とすのに必死でした。雪になる前に枝の葉を枯らし落とさなければなりません。遅れれば雪の重みで大事な枝が折れ、命を落とすことになるからです。樹皮を覆う荒々しいこぶは必死に季節と戦い生きてきた証です。ラダンはこの木が大好きでした。大きな大きなその姿は、大地そのものの力強さを現しています。 ラダンはそのぶなの木の根元からてっぺんに向かって、大きな声で呼びかけます。 「おじいさん、起きていますか。」 「なんじゃー。ラダンか。朝っぱらから元気じゃな。起きてるわい。ほれ、さっさとお入り。」 巨樹の幹がぱっくり裂けて大きな穴が出来ました。ラダンがくぐると、穴は元通りにふさがります。木の中には、小さな部屋がいくつかありますが、どこにおじいさんがいるのか分かりません。おじいさんに尋ねます。 「どちらにいますか。」 「地下の部屋じゃ。」
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