第2章 大切だから

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 「ヒトが力を扱う」  ぼんやりとした感じで繰り返すヴァードァナに頷き、フェスは続けた。  「もともと、力を扱える種族はいくつか存在します。それはそれぞれの力に属して生まれていますから、珍しくはありません」  しかしヒトの発生に力を司る者達の意図はなく、気付けばそこに存在し、変化して、そして彼等の意識を引き付けていた。  「実際、彼等が自身の体に力を集める事は簡単でした。そして彼等はそれぞれの意識を集中させる事で、力を発する事ができました」  もちろん力を集めるのも発するのも個体差はある。それでもほとんどの者が、何らかの力を現す事ができたのだ。  「ほとんどの者が? 本当か?」  それは聞き返してもおかしくない特殊な事だった。  力を司る者により意図的に生み出されたのであれば、その種族のすべてが力を扱うのに不思議はない。 もともと力との結びつきが強く生まれついているのだから。  しかしヒトには、力を司る者達とのそこまでの強い結びつきはない。  だからこそ本来あり得ない、異常なケースだと言えた。
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