第1章 はじめ

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 はじめ、そこには何も見あたらなかった。  遥かに続く闇の中、所々に灯る光の他には何もない。  否、ないように見える。  その闇に、ひとつの意識が生まれた。  意識は右も左もわからぬままに、辺りにある光の気配をうかがった。  無数に点在する光の中、ひとつ、一際輝く光の側にある岩の塊に妙に引かれる。  意識はじっと、その岩に集中した。  『………』  なんだかわからない。  感情がこの意識に今まで無かったと言えるなら、今まさに、この意識が持ち得たものはそれだと言えるのかもしれない。  岩にむかって闇の四方から、それよりも小さな岩が集まり続ける。そしてそれはまとまり、少しずつ大きくなる。  そうするうちに、そこから光が浮き上がった。  光は膨らみ、縮み、輝く中でひとつの形を造り上げていく。  意識はその光を見て、初めて言葉で考えた。  『あの光と同じ、力の結晶が欲しい』  その瞬間、岩の近く、光の前に闇が集まり、意識はその中へと溶け込んだ。  「おまえは?」  それはほとんど同時の、お互いへの最初の問いだった。
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