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「なぜ? 私にはおまえの方が美しいと思えるぞ?」
フワリと音もなく、エダーナはヴァードァナの側へと近づいた。
「この髪、漆黒だな。光を受けて艶を放っている。瞳は…ほら、あの遠くにある光を集めたような銀色だ。」
琥珀色の指に黒髪を絡ませる。
「おまえはこの天そのもので、それ以上だよ」
嬉しそうな笑顔がとても華やかだった。
そうして互いに見合い、お互いに思うところを語りあう内に、エダーナの体がピクンッと何かに反応した。
「エダーナ?」
ヴァードァナは不思議そうにエダーナを見る。
そのエダーナは自分の足下を見て、静かに指差した。
「見てみろ、ヴァードァナ。下の私を……」
言われ、見る。
下の、最初は岩だと思った塊は、今の二人の体とは比する術もない巨大なものとなっている。
そしてその割れ目からは、赤い光が浮かび上がっていた。
「あれは?」
その光を見ながらヴァードァナはたずねる。
赤い光は二人と、正確にはエダーナと同じように形が作られていく。
「あれは私の身の内より生まれし者」
エダーナは歌うように答えた。
赤い光から生まれた者はその光の色そのままの、真紅の髪と瞳をしている。
エダーナよりも少しきつめのきりりとした顔つきは、今、意識を持ち生まれた事への喜びで輝いている。
その細い腕がおもむろに振り上げられると、あちこちの隙間から赤い炎が吹き出した。
「火の子、火の神…フェス、だな」
生まれた子に名を贈り、エダーナは微笑みながらヴァードァナを見た。
「どうやら私は゛生みだす゛のが役目らしい」
そういう間にも、次なる変化が始まっていた。
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