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「術師にたのんで書いていただきました。数は限られています。慎重に使って下さいね。」
ラダンは一通りぱらっとめくってチェックします。様々な呪が施され、旅の良きアイテムになることでしょう。
「ありがとうございます。老師。」
ピンクとラダンの声が重なりました。
「どういたしまして。」
タイ=ピンはにこやかに応じ、二人をそれぞれ抱きしめます。
すると、思わず背中を縮めたくなるようなキーンという金属音がしました。
「おや、合図です。」
タイ=ピンは寂しそうにほほえみました。
「もう、迎えが来たようです。思ったよりも早いですね。旅支度を急いでするのです。私とはここで、最後になるでしょう。また、再びお会いできる日を楽しみにしています。
さ、お行きなさい。」
タイ=ピンにうながされるまま、ラダンはお城の自室へと、ピンクは別邸へと急いで向かいます。ラダンが支度を終え、別邸に着くころには、ピンクに、アキラ、バルスがラダンを待って湖まで、出ていました。
「僕が、最後か。遅れてごめん。」
「大丈夫だよ。使者はまだ来ていないから。」
バルスが答えます。ラダンはピンクを見やり、思わず吹き出しました。
「ピンク、亀を頭に乗せることにしたの?」
「違うの。この子、私の頭が気にいっちゃって動こうとしないの。頭の上でおトイレされたらと思うとドキドキよ。」
ピンクは、目をぐるりと回して答えます。
太陽はちょうど頭上に輝いています。その太陽に一つの点が見えました。やがてそれはどんどん大きくなって次第に形をとって行きます。
「迎えだ。」
誰かが言いました。不安と期待と、さまざまな思いを胸に、別れと旅立ちが訪れようとしています。しかし、これから訪れる未知の体験にみな希望を膨らませていました。
----第三章 旅立ち 終 ----
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