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老師は少し首をかしげます。
「調査して分ったのは、あなたの出身地で知られているタイ=ピンは、あなたではないということだけです。」
お茶をゆっくり飲んで、老師は穏やかに答えます。
「どうして、違うと言い切れるのですか?」
タイ=ピンは憎らしいほど、落ち着いていました。
「本物なら、その様に若くないからです。」
「おや?どう見ても若くはないと思うのですが。」
おどけてポーズをとるタイ=ピンを見やり、ラダンは、追求は不可能なことに思えてきました。
「変装を解いた姿のことを言っているのです。」
タイ=ピンは軽やかに笑います。
「ふふふ。姿が問題ですか?それが実像であるか、虚像であるか、ということが問題でしょうか?本質を見極められるかどうか、ということが大事なのではないですか?私は本物のタイ=ピンです。もっとも、呼び名ですがね。そして、こう見えても意外にも年寄りなんです。
しかし、そう言ってもあなたは納得しないでしょうね。
いいでしょう。全ての決着がついた後でなら、あなたの求めている形でお答え致しましょう。」
「全ての決着と言うのは?」
「あなたが使命をまっとうするということです。
しかし、無事に役目を果たしたその時には、あなたはもう答えを見つけているかもしれませんね。」
今までで一番、納得できる返事をもらいラダンは会心の笑みを浮かべました。
「お茶のお代わりは?よろしいですか?
では、私からの話に移らせていただきます。」
そう言うと、タイ=ピンは席を立ちラダンを手招きします。ラダンが老師の傍によると、老師はいきなりラダンの額に両手を触れました。ラダンはとっさに飛びのきます。
「痛いですか?」
「いえ、痛みはありませんが。不快なんです。」
「どんな風にですか。」
「うまく説明できませんが。ひどく無防備な感じがして。」
老師はふとため息をつきます。
「やはり。血の影響は避けられなかったようですね。五感が前よりもするどくなったでしょう。」
「ええ。」
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