第3話

11/14
前へ
/14ページ
次へ
老師は少し首をかしげます。 「調査して分ったのは、あなたの出身地で知られているタイ=ピンは、あなたではないということだけです。」 お茶をゆっくり飲んで、老師は穏やかに答えます。 「どうして、違うと言い切れるのですか?」 タイ=ピンは憎らしいほど、落ち着いていました。 「本物なら、その様に若くないからです。」 「おや?どう見ても若くはないと思うのですが。」 おどけてポーズをとるタイ=ピンを見やり、ラダンは、追求は不可能なことに思えてきました。 「変装を解いた姿のことを言っているのです。」 タイ=ピンは軽やかに笑います。 「ふふふ。姿が問題ですか?それが実像であるか、虚像であるか、ということが問題でしょうか?本質を見極められるかどうか、ということが大事なのではないですか?私は本物のタイ=ピンです。もっとも、呼び名ですがね。そして、こう見えても意外にも年寄りなんです。 しかし、そう言ってもあなたは納得しないでしょうね。 いいでしょう。全ての決着がついた後でなら、あなたの求めている形でお答え致しましょう。」 「全ての決着と言うのは?」 「あなたが使命をまっとうするということです。 しかし、無事に役目を果たしたその時には、あなたはもう答えを見つけているかもしれませんね。」 今までで一番、納得できる返事をもらいラダンは会心の笑みを浮かべました。 「お茶のお代わりは?よろしいですか? では、私からの話に移らせていただきます。」 そう言うと、タイ=ピンは席を立ちラダンを手招きします。ラダンが老師の傍によると、老師はいきなりラダンの額に両手を触れました。ラダンはとっさに飛びのきます。 「痛いですか?」 「いえ、痛みはありませんが。不快なんです。」 「どんな風にですか。」 「うまく説明できませんが。ひどく無防備な感じがして。」 老師はふとため息をつきます。 「やはり。血の影響は避けられなかったようですね。五感が前よりもするどくなったでしょう。」 「ええ。」
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加