第3話

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「術師にたのんで書いていただきました。数は限られています。慎重に使って下さいね。」 ラダンは一通りぱらっとめくってチェックします。様々な呪が施され、旅の良きアイテムになることでしょう。 「ありがとうございます。老師。」 ピンクとラダンの声が重なりました。 「どういたしまして。」 タイ=ピンはにこやかに応じ、二人をそれぞれ抱きしめます。 すると、思わず背中を縮めたくなるようなキーンという金属音がしました。 「おや、合図です。」 タイ=ピンは寂しそうにほほえみました。 「もう、迎えが来たようです。思ったよりも早いですね。旅支度を急いでするのです。私とはここで、最後になるでしょう。また、再びお会いできる日を楽しみにしています。 さ、お行きなさい。」 タイ=ピンにうながされるまま、ラダンはお城の自室へと、ピンクは別邸へと急いで向かいます。ラダンが支度を終え、別邸に着くころには、ピンクに、アキラ、バルスがラダンを待って湖まで、出ていました。 「僕が、最後か。遅れてごめん。」 「大丈夫だよ。使者はまだ来ていないから。」 バルスが答えます。ラダンはピンクを見やり、思わず吹き出しました。 「ピンク、亀を頭に乗せることにしたの?」 「違うの。この子、私の頭が気にいっちゃって動こうとしないの。頭の上でおトイレされたらと思うとドキドキよ。」 ピンクは、目をぐるりと回して答えます。 太陽はちょうど頭上に輝いています。その太陽に一つの点が見えました。やがてそれはどんどん大きくなって次第に形をとって行きます。 「迎えだ。」 誰かが言いました。不安と期待と、さまざまな思いを胸に、別れと旅立ちが訪れようとしています。しかし、これから訪れる未知の体験にみな希望を膨らませていました。 ----第三章 旅立ち  終 ----
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