死の間際に

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「陛下。しっかりなさってください。」とよりすがる荀文若。 「天命ゆえいかんともし難いでしょうからやめなさいよ。」と宥める諸葛亮。 「父上~!」と劉禅。 「「兄貴!!」」と関羽、張飛。 皆は多種多様にも自分の死を受け入れようとしていた。 「だが、どうなるのやら…。」 漢王朝は確かに中興を迎えた。 しかし、病床についてから新たに考えたことがある。 それは、太傅の司馬懿である。 名誉職にまつりあげたとはいえ、諸葛亮に匹敵する天才・司馬懿の野心は恐ろしいが、それに引きかえ、劉禅は聡明ではない。 いつ、司馬懿が劉禅にとって代わり、彼によって漢が滅ぼされてもおかしくはない。 不安はつきない。 言いたいことは山ほどある。 しかし、何から言えば良いのか? 考えれば考えるほど、答えは出てこない。 そうこう悩んでいると、劉備はついに何もしゃべることが出来なくなった。 「「「陛下!」」」 諸葛亮らが呼び掛けても、劉備は反応を示さない。 劉備は昏睡状態に入ったのだ。 それから数日後に程なくして劉備は死んだ。 齢70である。 結局、劉備の遺言は、病気が判明した直後に、諸葛亮に漏らしたことば。 「漢を再興させた。天下を再び、朕が孔明らの協力を以て劉氏のものになし得たのだ。我が身にのみに限れば、いつ死のうと悔いは残っていない。」 であったという。
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