Cαfё 1

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「…未成年で、名前も不特定。 明らかに採用しないよ?」 「…うっ」 「名前言いたくないんだろ? なら、手伝うなんて言わないように」 「じゃあ… 稚空がキスしてくれたら、教えてあげるよ?」 彼女はそう告げると愉しそうに微笑んでいたが、俺は興味が湧かず目を逸らした。 「大人をからかわないようにな?」 「…からかってないわよ、私!」 「…ファーストキスは大事に取っておくもんだぞ? 大好きな人とした方が幸せだしな」 「…稚空はしたことあるんだよね? 本当に大好きな人と出来たの?!」 「…ショコラさん? そんな事より、帰らないの?」 「えっ…」 彼女は時計を見ると、ムスッとした顔でこちらを見つめるがこう告げる。 「…稚空がしたのかどうか知りたい」 「未成年の発言にしては過激だなぁ…」 「誤魔化さないで! 私は真剣に訊いてるんだから…」 「何で俺の事に興味あるの? 俺なんか、ショコラからしたらオジサンだぞ」 「…稚空は初恋っていつだった?」 「初恋? んー、そうだなぁ…」 「私は…」 「ショコラさん? そろそろお帰り… 何なら送るから」 「…何で話逸らすの? 私には話したくないから?」 「うん。 話したくないからだよ」 「…」 彼女は俺のそんな言葉に言葉がないのか黙りすると、立ち上がっては涙目になっていた。 「やっと、話せたのに…」 「…やっぱ、俺の事知ってんだ?」 「稚空は私の初恋なんだよ?」 「…ショコラさん? そろそろ帰らないか」 「…やだ。 帰ってあげない」 「はぁー これだからガキは困るな」 「…稚空?」 「…キスしたら帰る事。 約束出来るか?」 「…やだ」 「じゃあ、どうしたら帰る?」 「…ココア、淹れてくれる?」 「…それで帰る?」 「うんっ」 ショコラはフッと微笑むと、スノーを抱いて背中を優しく撫でてやっていた。 俺と彼女の出会いはこんな豪雨が降る梅雨の夕方の喫茶店でだった。
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