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それが間違いだったのか、正しかったのかはわからない。
どちらかと言うと間違いな気がする。
なぜならその影が顔を上げたからだ。ずっとうつ向いていたその顔を…!
「ヒッ」
あたしの喉に空気が音をたてて吸い込まれた。声は出なかった。
恐怖があたしを支配していた。
(やだ!怖い怖い怖い怖い怖い…!)
影がこちらを向いた。目はなかった。鼻も何も。ただの影。
それでもあたしは怖かった。目をギュッとつぶり、心の中でひたすらに念仏を唱えていた。
何かの本でそうすれば金縛りが解けたという体験を読んでいたから、あたしにはそれにすがるしか方法がなかった。
(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…)
フッと体が軽くなった気がした。息苦しさも。
あたしが恐る恐る目を開けると、そこにはもう影は居なかった…。
それ以来あたしは自分の変な能力を自覚した。
以降もたびたび金縛りに襲われたが、自力でなんとかしてきている。そう、今も…。
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