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「あぁ、そうだ。誕生日プレゼント。机の上に置いといたから」
「え…あぁ、ありがと」
「あ」
「何」
「流れ星。今度はホント」
「え、どこ」
仕事用のデスクに戻ると、1冊の本が机の上に置かれていた。
表紙の、散りばめられた星々の写真から星の専門書かと思ったけれど、それは違っていた。
タイトルをちらりと見てから、中を開く。
『キラキラと白く光る星たちが川の一面を覆うその夜』
目で文字を追う。
『あの川の向こうには何があるの』
『あの川の向こう側とこちら側とでは時の流れる速さが違うんだ』
『向こう側には渡れないの?』
『今はね』
小さな子ども2人の会話が続く。
パラパラとページをめくりながら、その言葉の進む先をじっと目で追った。
『これからもずっと一緒にいてくれる?』
『うん。この星空が永遠に続くように、僕らはずっとずっと一緒だよ。
たとえ離れ離れになっても、ずっと一緒にいたいって気持ちがある限り、神様は僕らをいつでも会わせてくれる』
『あの星屑の川を渡って、きっと君に会いに行くから』
胸の中に堆積されていく言葉。
思い描く姿。
1000km向こうに残してきた想い。
嘘をついて去ったあの日の光景。
今もなお忘れてはいない、懐かしい面影。
『近いよ。すげー近い』
『…会いに行ってやれば?』
本当は何度も何度も、思った。願った。
いつだって、ずっとー
開け放った窓の向こうには、天の川。
ざわめく風が胸の中の想いを揺らす。
あの星屑の川のほとりに立って対岸を見つめればー
そこに、光は見えるのだろうか。
「美夜(みや)」
私を呼ぶ懐かしい声は、遠く離れたその場所で、今何を想っているのだろう。
End.
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