対岸の光

4/4
前へ
/6ページ
次へ
「あぁ、そうだ。誕生日プレゼント。机の上に置いといたから」 「え…あぁ、ありがと」 「あ」 「何」 「流れ星。今度はホント」 「え、どこ」 仕事用のデスクに戻ると、1冊の本が机の上に置かれていた。 表紙の、散りばめられた星々の写真から星の専門書かと思ったけれど、それは違っていた。 タイトルをちらりと見てから、中を開く。 『キラキラと白く光る星たちが川の一面を覆うその夜』 目で文字を追う。 『あの川の向こうには何があるの』 『あの川の向こう側とこちら側とでは時の流れる速さが違うんだ』 『向こう側には渡れないの?』 『今はね』 小さな子ども2人の会話が続く。 パラパラとページをめくりながら、その言葉の進む先をじっと目で追った。 『これからもずっと一緒にいてくれる?』 『うん。この星空が永遠に続くように、僕らはずっとずっと一緒だよ。 たとえ離れ離れになっても、ずっと一緒にいたいって気持ちがある限り、神様は僕らをいつでも会わせてくれる』 『あの星屑の川を渡って、きっと君に会いに行くから』 胸の中に堆積されていく言葉。 思い描く姿。 1000km向こうに残してきた想い。 嘘をついて去ったあの日の光景。 今もなお忘れてはいない、懐かしい面影。 『近いよ。すげー近い』 『…会いに行ってやれば?』 本当は何度も何度も、思った。願った。 いつだって、ずっとー 開け放った窓の向こうには、天の川。 ざわめく風が胸の中の想いを揺らす。 あの星屑の川のほとりに立って対岸を見つめればー そこに、光は見えるのだろうか。 「美夜(みや)」 私を呼ぶ懐かしい声は、遠く離れたその場所で、今何を想っているのだろう。 End.
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加