第4話 輪島浩二編①

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◇ 『パチンコ店に入ったらまず、台に座らず様子を見て回れ。当たりがよく出ている台を探すんだ』  パチンコでしょっちゅう儲けている友人が教えてくれた言葉だ。俺はそれを信じて、当たりがよく出ている台を見つけ、前の客が去るのを待ったんだ。  そして台をゲットしたあとは、携帯もいじらず根気強く打った。  その結果。  財布の中には345円残った。 「クソがっ! 二度と信じねえ」  店を出てすぐ、入口の前にタンを吐き捨ててやった。  イライラする。  先に競艇場へ行って1万すって、そのあとパチンコで2万すった。  これじゃあ煙草も買えねえじゃねえか。  自宅に戻るために、F駅へ向かって歩き出す。線路を越えた先にある、マンションの一室を借りているのだ。  駅前のコンビニと、駅を囲う灰色の壁との間には自転車が密集している。  邪魔くせえ。  蹴りとばしてドミノ倒しにしてやろうか。
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