第4話 輪島浩二編①

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 ふいに、俺の横でギキーッと金切音が鳴った。  驚いて振り向くと、自転車に乗ったじいさんが「邪魔や」と言った。  俺はじいさんを思いっきり睨みつけ、「あ?」と低い声で返事した。落ち窪んだ真っ黒な目はまだ文句を言いたそうだったが、じいさんはすごすご引き下がった。  歩道で今度は若い女性にぶつかりそうになっている。女性に対しても文句を言っている。  ああ、イラつくな。  俺はわざとじいさんの近くを通り、 「うっせえんじゃ」  と呟いた。  じいさんは悔しそうにこちらを見たが、やはりかかってはこない。  相手を選んでるんだな。  強いヤツに頭(こうべ)を垂れて、弱いヤツを威嚇する。  情けねえ。  じいさんに因縁をつけられていた女性は、俺にぺこりと会釈をし、そそくさと去っていく。その細い背中を見送ってから、俺は踏切を渡った。
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