第4話 輪島浩二編①

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 駅の南側にはたこ焼き屋がある。甘辛いソースの匂いをくぐり抜け、行きつけのDVDのレンタルショップを通り過ぎ、横断歩道を渡る。  神社の横を少し歩いた先で、ばったり詩織(しおり)に遭遇した。スーパーの袋をふたつ提げている。  詩織は俺を見ると、いつものように目を細めて屈託なく笑った。 「おかえり」 「……ただいま」  俺は痛んだ詩織の黒髪から目を逸らし、先にマンションのエントランスをくぐった。慌てて詩織がついてくるのが分かる。  203号室が俺たちの自宅。正確には、詩織が借りている部屋。  俺は詩織のためにドアを開けて待ってやらなかった。今日はそんな気分じゃないから。  詩織が入ってくるのを見ないまま、さっさと寝室に向かう。  ベッドに座ったとたん、デニムのポケットの中で携帯が振動した。右手で携帯を取り出し確認してみると、ミルクからの電話だった。
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