第4話 輪島浩二編①

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『コウちゃん、やっと出てくれたあ。ねえ、なんですぐ出えへんの?』  ……うっせえな。 「打ちよるときは携帯見んから。で、何なん?」 『何なんって冷たいなあ。まあええわ。今から会わへん? ホテル行こ』  下品なヤツ。 「あー、どこの?」 『バイパスんとこでええ? 直接待ち合わせよ』 「わかった」  通話を終えたあと、俺はひとつため息を吐いた。  顔を上げた拍子に、部屋の隅にある黒いギターケースが目に入った。  楽譜は全部捨てた。  バンド仲間とも一切連絡を取っていない。  なのになあ。  わざわざ目に見える位置に置きっ放しにして。  狭い部屋のスペース減らして。  ……責めてるのか? 俺を。
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