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「そこがお前さんの魅力かの。
ここは廓じゃ。金さえあれば好みの女が抱ける。
じゃがの、男は勝手な生き物でのう。
手に入った女に興味は無くなるんじゃよ」
都季は、訝しげな表情で「はあ」と頷いた。
「駆け引きかの。女子(おなご)を落とすまでが面白いんじゃ
手中におさまるのが容易では、つまらん。しかし堅固じゃと中途で諦めるしの。上級女は、この中間でおる事を保つんじゃな」
「私の話じゃなくて、上級女の話ですか?」
茶を見つめていた老人の目が、都季に向いた。
「いや、お前さんの話じゃ。
お前さんは上級女の素質を持っとる、というとるんじゃ」
「え、私がですか……」
都季は戸惑った。どのような顔をすればよいのか分からなかった。
娼妓になるつもりなど、さらさらないが、老人が話した素質とは、最高の女と謳われる上級女である。双龍の唐紙の奥に座した自分の姿が頭に浮かんだ。
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