第5話

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「但し、今はそうじゃが後は分からん。 女は環境で変わるからの」 老人は、残っていた茶を一気にすすった。 盆に置かれた茶杯は空である。 「御老。薬を服す茶が無くなってしまったようですが」 医者が静かに言った。 老人は、端から薬を服用するつもりなど無かったのだ。それを知りつつ言った医者の声には、微かなわざとらしさがあった。 「おや。話が長引いて茶を全部飲んでしまったわい。薬を飲むのを忘れておった」 老人は、ほっほっほっと声をあげて笑った。そして、その上機嫌な声のまま「さて、帰るとするかの」と、畳に掌をつけた。 「え……、娼妓を買いに来たんじゃないんですか?」 都季は、早口で言った。 老人が自分を買うと言っていた話は、忘れた振りをした。 老人は、どっこいしょ、と腰をあげている。
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