第5話

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「何を言うとるんじゃ。儂はお前さんを買うと言うたじゃろ。 これは、お前さんの金じゃ」 懐から出てきたのは金子である。 老人はそれを都季の手にのせた。 「でも、私は何もしてないのに……」 初めて触れた金子は、思っていたより重かった。金の冷たさが掌に伝わってくる。 「取っときんさい。 儂はお前さんが育つところを見たいんでの。 いつかお前さんが上級女になった時、お前さんに嫌われんよう今から唾をつけておくんじゃ」 「でも、私は娼妓になるつもりなんて……」 「今は、ないかもしれんが、先はどうなるか分からんじゃろ。 遠慮しなさんな。駄賃じゃと思うとりゃええ」 老人の声が、都季の言葉を遮った。 都季は「でも……」と、しつこく口を開こうとしたが、老人は聞こえぬ素振りで背を向けた。
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