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イルはお姫様抱っこをされたまま移動していた。その相手は、先程イルにキスをしたメイド、ローゼ・アピスであった。
「それで、聞きたいことがあるのですが」
イルは険悪な視線をぶつけながら話しかける。
ローゼが信用出来るのか。それも理由の一つだが、そんなのは二の次。
ではどうして?答えは簡単。コウモリの羽を背中から生やしたローゼが、イルを抱えたまま上空約二千メートルの高さまで飛んだのだ。
イルは早く降ろして欲しい。だから険悪な視線をぶつけているのだ。
「言わなくても分かる。『どうして貴女が私の婚約者なのか』でしょ?」
イルの目つきが変わった。まるで驚いたような目つきになっている。
「私、まだ何も」
「だから、言わなくても分かるわ」
その時、イルはあることを思い出す。
ハンター教で、ある種族について調べた事があった。
「ローゼ。貴女は、サトリですか?」
サトリ。 心を読むことが出来る世界最強妖怪種族の一種。最近では、人間との交流も盛んになってきている。
イルは、ローゼはサトリ族ではないかと考えた。
しかし、ローゼはそんなイルの考えを読んだのか、ニコッとして、「違うわよ」と伝えた。
「へっ?じゃあ、一体・・・」
すると、イルはローゼの背中を見て、また種族を思い出す。
「その羽、コウモリの羽ですよね。まさか、!」
「そう、私はサトリと、吸血鬼のハーフ(混血者)なの。それも強力な類のね」
イルは親について教えてほしいと頼んだ。ローゼはしばらく黙ったままになると、下を指差した。
「あそこで話すわ」
イルはローゼが指を差した方へ向くと、そこには一件の洋館があった。
見た目は普通の家に見えるが、色は屋根が青、壁が赤になっている。
「ローゼの家ですか」
イルがローゼの洋館を眺めていると、ローゼがイルを正面から抱きしめ、そのまま厚いキスをした。
「ッ!~~~~~~~~~!ッ」
イル。必死にもがく。しかし、やはり逃げられない。
ぷはぁっと二人同時に息を吐いた。
「さて、招待状も送ったし、ようこそ!私の洋館へ!」
イルは顔を赤らめながら、ライオンのように怒る。
「今のが招待状!?サイテーー!!変態!!人でなし!!」
「私、人間じゃないわよ」
「もぉ~~~~~~~~~~~ローゼのばかぁ~~~~!!!!」
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