吸血鬼の王

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その森は静けさと不気味さで溢れかえっていた。 木の一つ一つは枯れ果てて、地面には草が生えておらず、その代わりに大量の苔が生い茂っていた。 更に、この森には奇妙な殺戮事件が起きていた。それは、この森に入った冒険者や狩人が、全身の血を吸い尽くされてしまうというものだ。 一部では、吸血鬼の仕業と見ている者や、集団殺人という噂も出ており、人々はおろか、動物ですらも、この森には入ることはない。 そんな暗い森に、一人の狩人が足を踏み入れた。 「ここどこでしょう。何でこんな暗い森に入ったのでしょうか~」 少女の名は、イル・イシウス。 元ハンター教のメンバーだ。 彼女はたったの八歳で、ハンター教に入り、努力の積み重ねでハンター教最強の十人の内、第五位にまで駆け上がった。 環境に恵まれ、第三位~第一位からの評価も高く、下っ端達にも尊敬されていた。 彼女がハンター教に居た日々を話すのは、それはしばらく先の話。 グゥゥゥゥゥゥッ イルの腹から熊の唸り声のような音がする。見事な響きだ。 「あぁ~~~~~~~っ!お腹す~い~た~~!!」 腹が減っている。ココ最近、獲物が捕れないため、腹が空きすぎた。 「!!」イルが何かの気配を感じる。 すると、横から豚の化け物が出てきた。見た目は豚だが、目の上の部分からくの字をした角が生えていた。 豚の化け物は、牛のようにイルに襲いかかる! すると、イルが消えた。 ズババババババァァァァァァァン!!! 豚の化け物がイルに衝突した音ではない。イルが拳の一撃を何十回もぶちまけた音だ。 その速さは尋常ではない。恐らく実際は、何百回も拳をぶち込んだのだろう。 「これはいいですね!夕食はやっぱり、お肉に限ります!」 イルは喜び、早速丸焼きの準備に掛かる。 丸焼きが出来た。肉汁が溢れ出る。 「いっただっきま~~~す!!!」 フンガァァァァ!!!!とイルは豚の化け物の丸焼きに襲いかかる。それから、ものすごい速さで食べる。血管を吸う、肉を食いちぎる、骨すらもバリバリと噛み砕く。 十四歳の少女がこんな食べ方をするのを見ていると、引いてしまうのは当然だろう。 だが、そんな少女を一人の女性が監視していた。 白銀の髪、身体の見た目は華奢、赤いメイド服を着ていた。 「見つけたわ。私の婚約者」 メイドが笑ってその場を去った。
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