吸血鬼の王

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「ここは天国~ 幸せの場所♪」 イルは天国に行ったような喜びを歌にしながら歩いていた。先程食べた豚の丸焼きで満腹になったからだ。 「私はいるよ~ いつまでも~♪」 その歌のせいか、はたまた歌っている本人のせいか、周りの環境が次々と変化していった。枯れ果てた木々が立派な木となって桜を咲かせ、地面には様々な花が咲き、あっという間に大きなお花畑となった。 それだけではない。動物達も何故か集まりだしたのだ。それも皆、イルが歌いながら歩いた道に集まっていた。お花畑や桜もだ。 偶然ではない。明らかに彼女が咲かせたとしか思えない。 「ここは てんごー」 「く」と言おうとした瞬間、イルの脳内に電流が走る。 それと同時に、動物達が一斉にその場から逃げ出した。まるで何かから逃げるように。 そして、イルは腰のベルトに装着した双剣を抜く! ヒュッ ヒュッ ヒュッ 前方の叢から三本のダイヤ製のナイフが飛んできた!速い! イルは身体を後ろ向きに倒す。ナイフはイルの身体をスレスレで飛び、桃色の髪を少し切り裂き、後ろの三本の木に刺さった。 すると三本の木は、たったそれだけでバラバラにされてしまった。まるで粉のように。そして、その叢からナイフを投げた本人が現れる。 「あぁ。いいわ。その柔らかくてモチモチとした肌。そして、その反射神経、凛々しくて美しい、私の物にしたい!!」 イルは全身が震えた。 赤いメイド服の少女は更に寄る。ハアハアと呼吸を荒くしながら。 「ヒッ!?」 更に悪寒が走る。これは、逃げないとやばい! イルは双剣を腰のベルトに装着して、回れ右をした。 「あっ待ちなさい!婚約者~!!」 メイドが走り出す。イルは少し遅れて逃げ出した。 狩人がメイドから逃げる。とてもシュールな光景だ。 だが、逃げ続けて約1時間経過。 イルは気づく。メイドがどんどん追いついてくるという事実に。 イルは猛スピードで逃げながら話しかけた。 「この変態!!いつまでついて来るんですかっ!!」 メイドは答える。 「それは、貴女が私の婚約者だからよ!!」 「えっ?」と同時にイルはこけた。 バチ~~~~~~~~ンと全身を地面にぶつける。 そして、メイドが追いついて、イルにお姫様抱っこをした。 そして、そのまま口にキスをし、自己紹介をする。 「私はローゼ・アピス。よろしくね、イル」
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