Rain.14

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「……それは、言いたくない」 「は……」 なに…、それ。 明らかにそらされた目線。 キスしているとき、私と目が合ったにもかかわらず、ふっと笑った柳瀬。 …どうして。 どうして一番大事なところを弁解してくれないの。 ほら…、だから。 私は、だから葉月さんには勝てないんだ。 「…あんたの中では、葉月さんは大事?」 「……そりゃ、大事だろ」 「そうだよね。 柳瀬は…っ、いつまでも、いつまでも葉月さんが一番なんだ」 ボロボロと情けなくも涙が流れてくる。 あとから、あとから落ちてきて、嗚咽が混じる。 「楓…っ」 「もう、嫌だ! 私、もうあんたのこと追いかけたくない! 二番でいるのは、もう嫌なの!」 「聞けよ、俺の話をっ!」 「聞いたよ! でも、あんたはどうやったって葉月さんより私を選ぶことはできないんでしょ!? 私は心が狭いから、それじゃ嫌なの!」 グッとつかまれた腕を強引に振り払った。 そのまま正面に向き直って、柳瀬を見上げる。 「もう、私あんたのこと好きじゃない。 今、この時点で大っ嫌い!!」 そのまま柳瀬のヨコを通り過ぎて、昇降口に走り出す。 柳瀬はやっぱり追いかけてはこなかった。 ……いいんだ。 これで。 私の恋は終わったんだ。 もう二度と、恋なんてするもんか。
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