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「意味分かんねぇ!」
「ごめん、椿。
ごめんね?
そんな怒らないでよ。
大したことじゃないんだから」
「大したことだろ!」
これ、価値観の違い?
そういうすれ違いなのか?
分からなかったけれど、ただただ悔しかった。
苦しかった。
彼氏なのに、葉月を独占することができない歯がゆさ。
それはどれだけ懸命に頑張っても手に入れることができない葉月の気持ちのせいなのだと薄々気が付いていた。
そして多分、俺がどれだけ愛情を注ごうと葉月には届かないということも。
もうイヤだった。
もう、忘れたかった。
一度距離を取りたいと言って、俺は受験を理由に葉月とは連絡を取らなかった。
――葉月は、いい女だった。
こんな時まで聞き分けのいい子だった。
連絡は一度も来なかったし、弁解の電話もメールもなかった。
あのとき、葉月は一体何度浮気をしたんだろう。
きっと、一回二回ではないはずだ。
それの証明品みたいに、葉月のアクセサリーは種類が増えていた。
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