1730人が本棚に入れています
本棚に追加
もう、別れよう。
そう言った時も葉月はにっこり笑って頷いてくれた。
「いいよー、そうしよっか」
軽い口調で。
そして続けた。
「でも、ちょっと残念だな。
私ずっと椿と一緒にデートするの好きだったのに」
そんな言葉で心がグラついた。
たかが、別れようという選択をするだけ、ただこの一言を言うだけにかけた時間がボロボロと崩れ去るように心が乱れた。
手を伸ばしたくなった。
浮気しないでくれるなら、何度でもやり直したくなる。
……あぁ、こんなに会わなくても好きなんだと自覚させられた。
でも、やっぱり、彼女は沼だった。
「私ね、椿のこと好きだったんだよ。
だってデートすると周りの女の子に羨望の眼差しで見られるんだよ。
超気持ちよかった!」
晴れ晴れとした顔で、多分葉月の中で一番印象に残っていた思い出を口にした葉月。
……ずるい、女だ。
厄介で、振り回されて、本当にムカつく。
でも、一番ムカつくのは、
「俺は、あんたのこともう嫌いだよ」
最後に好きだったとすら言うことができないほど、葉月が好きな自分だった。
最初のコメントを投稿しよう!