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――そして、葉月はやっぱり厄介な女なんだ。
「おいっ!」
「いってっ…!」
道路を横断して葉月の元に走りよると、葉月が驚いた顔をして俺を見上げているのが視界の端に入った。
…腕に、アザも見えた。
それから視線をそらして、目の前にいる男の腕をつかむ。
声の割には、思ったほど大きな男でもなかった。
つかんだ腕も細い。
「あんた、声デカいよ。
すげぇ響いてる。
公衆の面前で、女とモメるのはどうだよ」
「はっ?
なに、おまえ!?」
「通りすがり。
さっきからすげぇ気になってたんだよ」
多分これだけ大声をだす男だ。
間違いなくさっき葉月が声を出して呼んだ『椿』という男が気になってるだろう。
少なくてもそれくらいは入れ込んでいるはずだ。
だったら自分がその『椿』だということはバラさない方がいい。
それを葉月も俺の視線で組んだらしく、俺の名前は出さなかった。
「おまえは関係ないだろ!」
「ないけど!
…ないけど、いくらなんでもこれはほっとけないだろ。
警察呼ばざるを得ない」
「はぁ!?
俺の彼女に詰め寄って何が悪いんだよ!」
つかみかかってくる勢いで怒鳴ってくる。
でも、男の腕は俺がつかんでいるので、殴りかかってはこなかった。
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