1730人が本棚に入れています
本棚に追加
――楓。
知らないでしょ。
楓、俺はね。
多分、あんたが思ってるよりずっとヒドイ人間なんだ。
だから、俺はあんたにもっと傷ついてほしい。
「……ハッ」
笑ってしまう。
なんで。
なんで、あの子はあんなに顔に出るんだろう。
楓といると、まるで一緒にいる時間すべてで告白をされているような気持ちになる。
体中で、あふれて止めることができない、俺への感情を必死で抑えて、それでも抑えきれないでいることが五感のすべてを通して伝わってくる。
あの子といるのは酷く心地よくて安心できる。
そして同時に傷つけたくなる。
もっと。
もっと俺のせいで傷ついてほしい。
もっと、嫌な気持ちになって、いろんな人に嫉妬して。
それで、もっと俺を好きだと言って。
「――椿。
なん、で…、笑ってるの……?」
「…え?」
その道具が、葉月だってなんだっていいんだよ。
楓が傷つくことが、俺はうれしいんだから。
最初のコメントを投稿しよう!