Wind.01

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まだ、ニヤけた顔が収まらないまま葉月の方を見る。 葉月はいつもと様子が違く、真顔になっていた。 「なに? どうしたの?葉月」 「どうしたの…っていうか。 なんで笑ってるの?椿。 …なんで、そんな余裕そうなの?」 「余裕? 当たり前だろ。 おまえ、一体何人の男とキスしてきたんだよ。 これぐらいで動じねぇよ」 今更、何を言ってるんだ。 葉月を見返すと、葉月の顔からサーッと血の気が引いた。 「…な、なんで…。 私のキスに抵抗しないの…?」 「は? 楓の泣き顔が見たかったから。 正直、そっちの方がオイシイって判断しただけだよ。 むしろ、そういう意味では感謝してるけど?」 「ちょ、ちょっと待ってよ…!」 葉月がグッと俺の両腕をつかんできた。 そのまま俺の体を揺さぶる。 「なに言ってるの?!椿。 椿は、私のこと好きでしょう?!」 「…っあんた、その自信いい加減に…」 「なんで…っ!? なんで、私より楓ちゃんの方が上になってるのよ!」 「はぁ?」 上? ……何が? 言っている意味が分からなくて葉月をただ見下ろす。 葉月の顔は、少なくても俺が今まで見たことがないくらい焦っていた。
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