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葉月は本当に必死だったんだろう。
俺の両腕を握る力が強くて、少し痛い。
やんわりとその両手をシャツから外すと、そこに皺ができていた。
アイロンをかけたばかりのシャツにくしゃりとした皺が目立つ。
「…葉月、」
「――どうして」
葉月は俺の両腕を握らない代わりに自分のワンピースを、これでもかと言うほど握りしめた。
「どうして、怒らないの」
「は?」
「私、男の人と遊んでたんだよ?
適当に彼氏作って、また浮気の繰り返ししてるの」
「……あぁ、そんなの見てわかるよ」
着飾った可愛らしい白のワンピース。
ところどころに咲いた花模様が女の子らしさを最大限に出している。
なるほど。
葉月によく似合う。
「怒ってよ。
私、こういう浮気しちゃダメなんでしょ」
「…ダメだけど。
でも、そんなこと大したことじゃないだろ」
いつものこと。
葉月にとってはいつもの当たり前の行動なんだから、別にイライラもしない。
だけど、葉月は俺の言葉を聞くと大きな目をさらに大きく見開いた。
ボロボロとそこから涙が零れ落ちる。
……あぁ、めんどう。
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