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「……葉月」
「っ、ウソじゃない…っ」
「…離して」
「いやっ」
ギュウっと抱き着いて離れない葉月を、口だけで拒否をする。
葉月は抱き着いたまま何度も頭を振った。
「だって、ほんとは分かってるもん!
もう絶対、私の人生で椿以上の男の子なんか現れないって。
私を椿以上に大事にしてくれる人なんかいないって!」
「…んなこと」
「あるよ!
こんなにも長い間片思いしてくれる人なんて、椿以外にいるわけない!」
葉月の抱きしめる力が強くなった。
…昔の俺はこんな時、どうしていたんだろう。
抱きしめ返したんだっけ?
どう考えていたんだっけ?
……でも、今はもう変わらない。
動かされない。
「…ごめん。葉月。
その言葉、遅かったみたいだよ」
俺は葉月の腕を振り払わないまま、見慣れた旋毛を見下ろして落ち着いた声でそう告げた。
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