Wind.01

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「……葉月」 「っ、ウソじゃない…っ」 「…離して」 「いやっ」 ギュウっと抱き着いて離れない葉月を、口だけで拒否をする。 葉月は抱き着いたまま何度も頭を振った。 「だって、ほんとは分かってるもん! もう絶対、私の人生で椿以上の男の子なんか現れないって。 私を椿以上に大事にしてくれる人なんかいないって!」 「…んなこと」 「あるよ! こんなにも長い間片思いしてくれる人なんて、椿以外にいるわけない!」 葉月の抱きしめる力が強くなった。 …昔の俺はこんな時、どうしていたんだろう。 抱きしめ返したんだっけ? どう考えていたんだっけ? ……でも、今はもう変わらない。 動かされない。 「…ごめん。葉月。 その言葉、遅かったみたいだよ」 俺は葉月の腕を振り払わないまま、見慣れた旋毛を見下ろして落ち着いた声でそう告げた。
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