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「葉月。
俺は、おまえの存在を肯定するための保証人じゃないよ」
「……え…?」
「寂しさを埋めるためにいるわけじゃない。
あんたは、俺がいることで独りにならない安心感を得ているのかもしれないけど、独立しないと。
あんたは俺が好きなわけじゃないでしょ?」
「…っ好きだよ」
「うん。
葉月が嘘をつかないことくらい知ってる。
だから、勘違いしてるって言ってるの」
葉月の目の色が暗くなった気がした。
迷っているような戸惑っているような表情。
葉月は嘘をつかない。
絶対に。
ある意味、天然でずるい女なんだ。
「……椿だって、分かるはずだよ」
少し間があった後、葉月はポツリと言葉をこぼすように言った。
「付き合えたらラッキーぐらいで寄ってくる最低な男と、本当に心から好きになってくれてそばにいてくれる男の違い。
思われている幸福感の違い。
顔が良ければいいほど、私たちはその見極めを大事にしなくちゃいけない。
相手が軽い気持ちなのに、こっちが本気とかありえないから」
葉月はうつむいたまま、小さくため息をついた。
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