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「でもね、本気で好きになってくれる人なんて、なかなかいないんだよ。
思ったより皆軽いの。
告白したら、この子可愛いからいっかーで、付き合うの。
神経どうなってんの、って感じ。
振ってくれる人なんて、陽大以外誰もいなかった」
「……」
「でも、椿は違うでしょ。
私のために怒ってくれて、私のために別れてくれた。
私が好きだから、いろんなことをしてくれた。
そうやって愛されてるって実感するのが、どれだけ心地よいか、もう椿は気づいちゃったんでしょ?」
ポタ、ポタと涙の粒がコンクリートの道に濃い彩をつける。
そして、ゆっくりと周りに残る雨の跡と同化していく。
「私は、…椿と一緒にいるのが一番心地良い。
結婚するなら椿が良い。
これは、恋愛感情かな。
誰にも触れられたくないし、盗られたくないもん…」
ズッと葉月が鼻をすする音が響く。
車が道を走る音だけがその間にBGMのように広がった。
「……知らねーよ。
俺は、おまえを追いかける恋しかしたことないんだから」
「私だって知らないよ。
優しい陽大のそばに居たいって、そんな思いしかしたことない」
車が走る音が響く。
俺はゆっくりと空を仰いで、両手をポケットに突っこんだまま、背中を後ろの建物に預けた。
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