Wind.01

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「でもね、本気で好きになってくれる人なんて、なかなかいないんだよ。 思ったより皆軽いの。 告白したら、この子可愛いからいっかーで、付き合うの。 神経どうなってんの、って感じ。 振ってくれる人なんて、陽大以外誰もいなかった」 「……」 「でも、椿は違うでしょ。 私のために怒ってくれて、私のために別れてくれた。 私が好きだから、いろんなことをしてくれた。 そうやって愛されてるって実感するのが、どれだけ心地よいか、もう椿は気づいちゃったんでしょ?」 ポタ、ポタと涙の粒がコンクリートの道に濃い彩をつける。 そして、ゆっくりと周りに残る雨の跡と同化していく。 「私は、…椿と一緒にいるのが一番心地良い。 結婚するなら椿が良い。 これは、恋愛感情かな。 誰にも触れられたくないし、盗られたくないもん…」 ズッと葉月が鼻をすする音が響く。 車が道を走る音だけがその間にBGMのように広がった。 「……知らねーよ。 俺は、おまえを追いかける恋しかしたことないんだから」 「私だって知らないよ。 優しい陽大のそばに居たいって、そんな思いしかしたことない」 車が走る音が響く。 俺はゆっくりと空を仰いで、両手をポケットに突っこんだまま、背中を後ろの建物に預けた。
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